ダイアトーン DS-66EXのレストア(その2) ミッドレンジ編 & ツイーター編

<ミッドレンジユニット編>

<ミッドレンジユニットの特性調査>

エンクロージャー から取り出したミッドレンジユニットです。金属ネットは外してあります。

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ミッドレンジのインピーダンス特性を調べました。

f:id:soundlabtune:20230519125726j:image共振周波数fsのピークは高音域側に裾を引いていました。このようなインピーダンス特性は、単一ユニットでは見たことがありません。463Hz でのスピーカユニットの通常の振動系の他に、700〜800Hz付近にも別の振動系があるようです。これは、このユニットだけでなく、もう一つのユニットでも同じでした。

振動板に触れてみると、エッジはカチカチで固着状態です。このエッジは、ウーハーと同様の布エッジです。エッジの表側、裏側ともに布目は見えますが、ウーハーに塗布されていたビスコロイド的なものは確認できません。

調べてみると、姉妹機であるDS-77EXのミッドレンジのエッジには、「表面にダンピング材をコーティングした布を2枚貼り合わせた積層クロス」が採用されています。

<参考資料>https://audio-heritage.jp/DIATONE/diatoneds/ds-77ex.html

このため、本ユニットでも「ダンピング材で接着した積層クロス」が使われている可能性があります。このダンピング材が、ウーハーと同様に経時変化によって硬化したと考えれば、カチカチ状態は納得できます。

<ミッドレンジユニットのエッジ軟化>

溶剤系のダンピング材で接着した積層クロスであれば、カチカチのエッジの柔軟性は、ウーハーで使用した「軟化剤」で回復できるように思います。そこで、「軟化剤」を試してみました。エッジ幅 は5mmと狭いので、はみ出さないように塗りました。

インピーダンス変化を示します。

f:id:soundlabtune:20230519125953j:image塗布一日後には、メインの振動系の共振周波数fsは389Hzに下がり、「軟化剤」の効果が認められました。そこで、「軟化剤」の塗布を3回行い、最終的にはfs=361Hzとなりました。なお、第ニ振動系では、共振周波数は変化せずインピーダンスは相対的に小さくなりました。

ネットワークを付けずにユニット軸上30cmでのSPL(出力音圧)の周波数特性を測定してみました。500Hzより低い周波数では、音圧が大きく低下しています。

f:id:soundlabtune:20230519130512j:image「軟化剤」を塗布することにより、カチカチだった振動板は、エッジが細いこともあり大きくはありませんが、やや動くようになりました。今回のエッジの軟化処理によって、本来のユニット特性にだいぶ近づいたように思います。

ツイーター編

<ツイーターの調査>

エンクロージャー から取り出したツイーターの画像です。金属ネットは外してあります。

f:id:soundlabtune:20230519131007j:imageツイーターの振動板には、比弾性率の大きなドーム型チタン金属が採用されています。この振動板を覆うように、頑丈な金属カバーがネジ止めされた構造になっています。この独特の構造は、薄くて脆いチタン金属を保護する目的のようですが、こんなにシッカリ金属に覆われていて、キチンと音が出るものなのでしょうか?

ツイーターのインピーダンス特性を示します。

f:id:soundlabtune:20230519131127j:image共振周波数fsは3100Hzでした。

ネットワークを付けずにユニット軸上30cmでのSPL(出力音圧)の周波数特性を測定してみました。振動板が頑丈な金属カバーに覆われていても音は出ています。 5000Hzより低い周波数では、音圧が大きく低下しています。

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>> レストア後の最終総合特性編に続く